猫の尾側口内炎 本当に難治性口内炎?

猫の「難治性口内炎」とは

猫の口内炎の中でも、セミナーなどでよく取り上げられるのが「難治性口内炎」や「尾側口内炎」と呼ばれるものです。
呼び方はいくつかありますが、
「口腔内の奥(尾側)にできる、治りにくい歯肉口内の炎症」という共通の症状をさします。
この病気は強い痛みを伴うことが多く、食事がうまく摂れなくなる猫ちゃんもいます。

難治性口内炎の内科的治療

ステロイド剤や非ステロイド系抗炎症薬を使って、炎症や痛みを和らげるのが一般的です。 必要に応じて抗菌薬や口腔ケア用のサプリメントを併用することもあります。
ステロイド剤による治療反応が良いと報告されているので、使用されることが多いですが、全身的な副作用のリスクもあるため慎重な判断が必要です。

難治性口内炎の外科的治療について

内科治療で十分な効果が得られない場合、外科的な治療が検討されます。 多くの症例で抜歯によって歯肉の炎症が軽減され、食欲などの改善があると報告されています。 抜歯には、犬歯より奥の臼歯を中心に抜く方法と、切歯・犬歯も含めた全顎抜歯の方法があります。
ただし、奥歯は多根歯のためそもそも抜歯に時間がかかり、抜く本数も多い為、麻酔時間は長くなります。その為、手術前に猫ちゃんの体の状態をしっかり把握し、麻酔手術が与える負担についても考慮する必要があります。

ここまでが、いわゆる「難治性口内炎」の基本的な説明です。

それって本当に「難治性口内炎」?

ここからが今回の本題です。
実は、「口腔内の尾側」は歯垢や歯石が溜まりやすく、歯周病による感染、炎症、痛みが起こりやすい場所です。 さらに、歯並びの問題や噛み方の癖などによって、歯が粘膜に当たり、物理的な刺激で歯肉に炎症や痛みが生じることもあります。

つまり、口腔内の尾側に炎症があって、食べつきが悪いからといって、
すべてが「難治性口内炎」とは限らないのです。

しかし、雑誌やセミナーなどで「難治性口内炎」「尾側口内炎」が頻繁に取り上げられるため、 「口腔内尾側の炎症=難治性口内炎・尾側口内炎⇒ステロイド投与や広範囲の抜歯」といった、体に負担の大きい治療が選ばれてしまうことがあります。

実際、数週間前にも某動物医療センターで「難治性口内炎」が疑われ、ステロイドの内服と麻酔下での抜歯が提案された猫ちゃんがいました。 その子は慢性腎臓病を抱えていたため、ステロイドの使用や全身麻酔による広範囲の抜歯は、慎重に判断すべき状況でした。
本当に「難治性口内炎」「尾側口内炎」であり、
それが原因で食事ができないほど深刻な場合でなければ、
このようなケースではこれらの治療は避けるべきだと考えています。

このように、「難治性口内炎」と診断される前に、炎症の原因をしっかり見極めることがとても大切です。 猫ちゃんの体に優しい選択をするためにも、まずは冷静に、そして丁寧に診断を進めていきましょう。

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