会陰ヘルニアについて

会陰ヘルニアとは

ヘルニアとは臓器が正常な位置から飛び出すことを言います。

次に、会陰とは大まかに肛門~外陰部周囲をさします。動物の肛門を後ろから眺めた時に見える範囲と考えていいでしょう。

会陰部には筋肉や靭帯・結合組織などがあり、これらの組織は腹腔内と会陰部を隔てる壁としての役目や、肛門や直腸の支持をしています。

会陰ヘルニアはこれらの支持組織が薄く脆弱となり、組織間に空洞ができてしまい、
この空洞部に腹腔内臓器が飛びだしてきたり、支持を失った直腸が蛇行突出したりする病気です。

特に、腸管や膀胱など重要な臓器がヘルニアを起こした場合は、
最悪の場合死に至る危険があります。

下記に原因、症状、診断方法、治療法について書いていきます。

会陰ヘルニアの原因

現在のところ、明確な原因は分かっておりません。
しかしながら、未去勢の中高齢のオス犬に多く発症することから、男性ホルモンの影響や加齢による筋力低下が関係していると考えられています。

会陰ヘルニアの症状

症状で最も多いのが「排便障害」です。
その他には、「排尿障害」や、「肛門周囲が膨らむ」などを主訴に来院されることが多いです。
具体的には排便時間が長くなった、便が少量しかでない、排尿時間が長くなった、頻尿、肛門周囲が排便時に膨らむなどです。
特に、去勢をしていない中高齢のオス犬に、上記症状がみられたら要注意です。

会陰ヘルニアの診断

視診や触診や直腸検査などの身体検査、
レントゲンや超音波などの画像検査、
尿や便の検査などを行い会陰ヘルニアかどうかを診断します。

検査結果や動物の状態（年齢や性格、基礎疾患など）を総合的に考慮し、治療方針を決定します。

会陰ヘルニアの治療

会陰ヘルニアの治療は内科治療と外科治療に大別されます。

内科治療はヘルニアが軽度の症例や、
様々な理由で手術を行えない症例で行いますが、残念ながら内科治療は会陰ヘルニアの根本的な解決とはなりません。
内科治療を一生懸命行ったとしても、
ヘルニアが進行することはあります。

内科治療の主な目的は排便障害のコントロールです。排便障害による不快感や、

排便時の過剰腹圧を軽減することで、
できるだけヘルニアが悪化するのを予防します。治療方法は食事管理、体重管理、内服薬などです。

次に外科治療は会陰ヘルニアの根本的解決を目指し、薄く脆弱となった組織間の空洞を埋める手術を行います。
腹腔との隔壁機能、直腸肛門の支持機能を回復させることを目的にしています。
しかしながら、
様々な術式が考案されているものの、
術後の再発率が多いと報告されています。
術式にもよりますが、再発率はおよそ20～60％程と言われています。
ヘルニアが進行し、元々の組織が脆弱になるほど再発率は上がる為、
手術をご希望の場合はなるべく早く行うと良いでしょう。