異物誤飲について 三咲動物病院
近ごろ異物誤飲が多い気がするので異物について。
先に伝えたいことをまとめてみます。
①幼少~若年の子は好奇心旺盛なので特に注意
②異物クセがある子は歳を重ねても油断しない
③異物グセがある子が急に何度も吐き始めた、食欲がなくなったときは早目に診察をお願いします
④異物かどうかの診断には時間がかかることがあります
⑤異物の形状、詰まった場所、詰まっていた時間によっては危険性が高くなります
⑥動物が誤飲しないように、人ができるだけ気を付ける事が肝心です
それでは本文に。
まず異物誤飲で来院されるのは圧倒的に若い子が多いです。
人の赤ちゃんによく例えられますが、人とは違い、
異物が好きな動物は何歳になっても誤飲しがちなので油断は禁物です。
次に一括りに異物といっても、
紐、ビニール袋、おもちゃ、手袋、ボタン、石、焼き鳥の串などなど様々です。
飲み込んでしまってもそのまま便に出てくることもあります。
しかし、詰まってしまった場合は大変です。
異物を食べたことが明らかな動物または異物グセのある動物が
急に食欲がなくなり、何度も吐く、ぐったりしている。
この様な症状が出た際は緊急性が高い可能性があります。
お早めに、お近くの病院を受診してください。
では何故急いだほうがいいのか。
異物が詰まると腸の血流が悪くなり、経過が長いほど腸は深刻な障害を受けます。
また腸の炎症が周囲組織に悪影響を及ぼしたり、頻回の嘔吐による脱水などで状態が複雑化していきます。
つまり時間が経つほどリスクが上がってしまいます。
しかし、本当に異物が原因なのか、手術適応なのか。
その判断をするために検査を行います。
代表的な検査がレントゲン検査です。↓の写真をご覧ください。
オレンジ矢印が示す白い物が異物。左の画像は筒状異物が2個あり、右の画像はひも状異物がみられます。
臨床症状、動物の体格、異物の大きさや腸にある位置などを考慮しこの2例は速やかに開腹手術となりました。
しかし、全ての異物がレントゲンに写るわけではありません。
この子は2日前から突然吐き始めたということで来院されました。
上の2症例と違い明らかな異物は写りません(左画像)。
しかし腸が1か所に集まる異常所見がみられ(オレンジ丸)、バリウム検査を行ったところ異物が疑われ手術となりました。
(真ん中がバリウムを投与直後、右写真は投与後2時間の写真。オレンジ丸の領域でひも状異物を疑う所見があります。)
異物誤飲から時間が経っていたため腸は壊死する一歩手前の状況でしたが、無事退院することができました。
以上のようにすぐ分かる異物と、判断まで時間がかかる異物(最後まで判断が難しい時もあります)があります。
やらずに済む手術であれば動物のためにもやらないでいたい。
しかし、その判断の為にも時間がかかる、時間がたつほど腸がダメージを受ける。
そんなモヤモヤとしたジレンマのなかで検査をつづけ、
ご家族の方にはハラハラとした時間を待って頂けなければなりません。
今そこにある危機、それが異物です。
前から異物クセがあるけど、なんとも無いから平気!
とは思わず、
異物を誤飲しない環境を作っていく。
なによりもこれが大事な事だと思います。
本当はさらっと5行ぐらいで終わりにするはずが長くなりました。
それでも全然書き切れない。
断片的な情報にはなってしまいましたが、少しでも異物について伝わり、
異物誤飲による事故が減ってくれれば幸いです。
話は変わりますが異物について書こうと思った瞬間から
「今そこにある危機」というワードが頭から離れず、
同時にハリソン・フォードとウィレム・デフォーも頭の中を漂っています。
特におススメの映画ではないのですが、ご興味持たれた方はご覧になってはいかがでしょうか。
それでは。
千葉県船橋市
三咲動物病院