犬の乳歯抜歯について2

今回も乳歯抜歯について。
その中でも乳歯遺残が起こりやすく、しかも抜くのが大変な上顎犬歯の乳歯にスポットを当てて書きます。
乳歯を抜歯した方が良い理由については↓から
犬の乳歯抜歯について1

1 上顎犬歯の乳歯は、長く・細く・薄く・曲がっているので抜きにくい

2 上顎犬歯の乳歯は周りの歯に近く、器具の操作が他の乳歯に比べ難しい

3 歯を抜くために、まずは歯周組織から引き離す

4 抜歯方法は歯肉を切開するかしないかで大きく分けられる

 

上顎犬歯の乳歯抜歯が大変な理由
犬歯乳歯の歯根部は長く、細く、薄く、しかも歯が少し曲がっているので折れやすいです。
また、前後の永久歯の歯根と近い事が多い為、器具を操作するスペースが狭く、無理をするとこれら永久歯の歯根を傷つける可能性もあります。
以上の理由から上顎犬歯の乳歯抜歯は他の乳歯抜歯よりも処置をより難しく、時間がかかります。

左:口の中で見えている歯の部分に比べ、見えていない歯根の方が長く、徐々に細くなります
中央:歯根に向け薄くなっていきます
右:永久歯の歯根イメージを青点線で表しました。隣合う永久歯の歯根と犬歯乳歯の歯根は非常に近接しています。また、乳歯はやや曲がっています。

抜歯方法について
まず、健康な歯は引っ張てもスポンッ!とは抜けません。
それは歯周組織が強固に歯を支えているからです。
そこで、下の写真(左)の器具を使います。
器具先端の刃物部分を使い歯根周囲の繊維を断裂させると歯が動くようになっていきます。
ここまで来ると抜歯ができるようになります。

抜歯方法について+α
実際の抜歯方法は大きく2つに分けることができます。
①歯肉を切開せず抜く方法
➁歯肉を切開して抜く方法
以下、質の低い写真で大変恐縮ですが簡潔に説明していきたいと思います。

①の方法を下の写真(右)で説明します。
赤い所は歯肉です。歯肉の下には歯槽骨という歯を支える骨があります。
(右写真の左上、歯の周囲の白い部分が歯槽骨です。歯槽骨の上に歯肉があります)
器具を歯肉と歯根の隙間に差し込んでいるように見えますが、
実際は歯肉の下の歯槽骨と歯根の間に差し込んでいき、歯根周囲の繊維を断裂させています。
この操作で歯をグラグラと動くようになる程度まで脱臼させて、抜歯します。

左:抜歯に用いる道具の一部。歯と歯を支える骨の隙間に器具を差し込むように使います。     右:①の方法で抜歯するときのイメージ。赤い所は歯肉をイメージしてます。

次が➁の方法です。
まず歯肉を切開しキレイにめくります。
歯槽骨が出てくるので、手術用ドリルを使いこれを一部削ります。
露出した歯根を目視しながら、歯根に沿わせて器具を操作する事が可能となります。
抜歯後は歯肉の縫合を行います。

➁の抜歯方法
左:歯肉を一部切開します
中央:切開した歯肉をキレイにめくると、歯を支える骨(歯槽骨)が露出します
右:歯槽骨を一部削り、歯根を露出させます

左:歯根に沿って器具を挿入できます
右:切開した歯肉を縫合して完了です

2つの方法の内、どちらが優れているという事はありません。
どちらも良い点、悪い点がありますし、病院や先生によってもアプローチは違うと思います。
それぞれの歯の状況に合った処置を適切に行い、歯の健康を維持していきましょう!

*血が苦手な方に配慮し、ペイントでつくった画像で説明しました。
分かりづらかったと思いますが、少しでも動物の歯について伝われば幸いです。
また、今回割愛したポイントや注意点などもありますし、画像もあくまでイメージとして認識してもらえればと思います。特に歯肉の切開方法や歯肉の縫合などは乳歯と永久歯の状況や、施設・術者による違いがでると思います。

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